コラム

第25話 旅行 – 飯!

今回は旅に途中からジョインした友達との思い出をチョット書こうと思う。

彼は、アメリカに留学したときに知り合った友達だ。大阪の出身で、松田聖子のポスターを寮の部屋に貼っていたのを覚えている。彼の実家は何かのお店(たしかレストランだったかな)をしているとのことで、特に留学の費用で苦労しない家庭で育っている様子だった。

一度、私は普通のサラリーマンで留学するのは大変だと話したところ、商売をしているとそんな苦労はないと話してくれた。そこで、私は商売に関して質問をした。すると、彼はタバコの自動販売機の話しをしてくれた。繁華街で立地条件がよければ、タバコの自動販売機一台で一日数十万円の売上げがある。一ヶ月で100万円以上の利益を上げるなんてそんなに難しいことではない…。とのことだ。

なるほど、たかがタバコの自動販売機一台で彼の留学の費用を賄うのに余りある収入があるのだから、商売人ってすごいんだな~とつくづく感じた。そのときには、日本に帰ったら自動販売機をどこかに設置して「儲けたる!」と思ったものだが、未だに実現しない。(^^;)

さて、彼と会おうと決めたのはニューヨーク滞在中、手紙を書いたのだ。留学してから約半年ぶりに会うので楽しみだった。彼はサウスキャロライナの大学に通っていたので、南下する途中に彼の学校に寄ることにした。バス停で再開したときには嬉しかった。たった半年しか経っていなかったが、気持ちが許せる友達と会うのは海外では特に嬉しいものだ。その日は彼の寮に一泊させてもらい「旅は道連れ」とばかりに、彼を旅行に誘った。

彼に、私の珍道中での出来事を話し、貧乏な旅の面白さを語った。

すると、彼も2週間程度の休み(彼の学校はセメスター制だったので、冬休みが2週間ちょっとしかない。ちなみに、私の通った大学はクオーター制で約一ヶ月の休みがあった。)にも関わらず、私と一緒にアメリカの最南端を目指すことになったのだ。

彼は「野宿が中心」だと思い、荷物の中には「なべ」を入れてきた。大きさは直径15cm、電気のコンセントが付いていてそのままでお湯が沸かしてラーメンを作ることも出来る優れものだった。そして、彼はそのなべと一緒にお米、レトルトのカレー、そして海苔を持って来てくれた。

私は、電気が使える場所でなければ使えない「なべ」なんて使い物にないだろうとは思ったが、意外や意外、2度ほど恩恵に預かった。さて、どこで電気を盗んだかというと、バス停の待合所。

バスの待合所にもいろいろあって、初めてその「なべ」使った場所は意外に簡単にコンセントが見つかり、それを使ってお湯を沸かし、一食お金を使わずに食事に預かることができた。公園で食べたときの「ときめき」といったらなかったね。写真を一枚撮ったが、アホ面丸出し状態。

しかし、問題は二度目。
一度目で味をしめた私たちは、今回もとばかりにあれはマイアミのバス停で今度は「お米」を炊くことにしたのだ。しかし、さすがにマイアミのバス停はとても近代的で大きく、まだ建物が完成してから間もない様子で、どこもかしこもピカピカだった。コンセントも目だったところになく、探してみると建物内の通路の壁の下の方にに清掃用に準備されているのしか見つからなかった。

半分諦めかけた私たちだったが、それでも空腹には耐えかねず、人ごみの多い通路の脇に陣取り、なべを荷物で囲みながらお米を炊くことにした。しかし、お米を炊くためにはもちろんお米を磨ぐ必要がある。お手洗いで米を磨ごうとしたが監視の目が厳しく、お米を磨ぐことができなかった。そこで、「死ぬことはあるまい」と観念をして、お米を磨がずにそのままで炊くことした。

先程書いたようにコンセントがあるのは人通りの激しいバス停の通路、そこに荷物で円陣を組んで米を炊き始めた私たちはすぐにある問題に直面した。

それは、臭い。

お米を磨がなかったのがその「悪臭」の理由だったのだろうが、とにかく蒸気と共に「臭い」が立ち込め始めたのだ。近代的なマイアミのバス停の中でだ。私たちの前を通り過ぎる人たちは、私たちが何をしているのか、きっとなんとなく理解していたと思う。しかし、特に叱りもせず、ニヤニヤして通り過ぎて行った。(運よくそのときには警備員は私たちの目の前を歩いていかなかった。)

お米が炊き上がるのまでの時間は十数分、そんなに長い時間ではないのだが、白い蒸気と臭いでおちおちしていられなかった。なんせ、インデアンの狼煙(のろし)でもないのに、荷物の真ん中から蒸気が上がっているのだから….。さて、ヒヤヒヤの時間が過ぎ、やっとご飯が炊き上がった。

ご飯さえ炊きあがったらこっちのもの、準備していた海苔を一枚切らずに広げそこにご飯を乗せて、ハンバーガー屋から持ってきた塩をふりかけて頬張った。腹が減っていたので、これが美味しかった….はずだった。

しかし、それはめちゃくちゃまずかったのだ。ぬか臭いのだ!

多分だれも食べたことがないだろうからどんな味だか説明すると、舌触りはぽそぽそ、さらに「糠」の臭いがするのだ。食べれたもんじゃない。

でも、折角炊いたご飯、捨てるのはもったいないので、二つおにぎりを作りとにかく一つは二人で食べたが、さすがにもう一つは非常食という位置づけで2日くらい持ち歩いて捨てたのを覚えている。忠告しておこう、お米はきちんと磨いてから炊くこと。(^^;)

  [2000年3月23日発行]