コラム

第29話 先生に教える生徒?

4月に入り本屋さんに行くと、入り口のところに山積みにされたNHKのテキストが目に付く。毎年恒例で、多くの人が英語やその他の外国語を勉強しようと意気込んでテキストを購入するからだ。

NHKのテキストは安い。私のお気に入りの「やさしいビジネス英語」のテキストは370円(2000年時点)。喫茶店に入ったらすぐになくなってしまう金額なのにも関わらず、中身は素晴らしくとてもためになる。後はラジオさえあれば、英語の勉強には事欠かない。実際に一生懸命勉強しようとすれば、これだけの量をこなすのは至難の技だ。

だから、気楽に継続していくことをよく人には勧めているのだが、世の中の大半の人達は残念ながら挫折の道を歩むらしい。だって、もしも全員がテキストを一年間購入して勉強するとしたら、本屋さんの入り口には一年中テキストが山積みされていていいはずだ。

しかし、毎月毎月テキストの山は低くなり、いつの間にやら片隅にあるテキストコーナーなるところに細々と「野積み」されてしまうのが、年中行事だ。(f^^;)

以前にも何度かご紹介しているが、NHKのラジオ講座はお勧めだ。留学を目指す人なら、絶対に「やさしいビジネス英語」を勧める。レベル的にいうと一番高い部類に入るが、あのかったるい基礎英語を聞いているときに襲ってくる「睡魔」と比較すれば、こっちの方がはるかに継続しやすいし、実践としてためになる。(f^^;)

私は、ここ何年間も講師の杉田敏さんにはお世話になりっぱなしだ。
『今年もお願いします』と、4月のテキストを片手に「隙間の数十分」を英語の勉強に使っている。もうそろそろゴールデンウイークに突入となるが、勉強する気持ちになった瞬間が「旬」だ。370円の投資で大きなりターンを期待して一緒に勉強しよう!

しかし、「勉強することイコール苦痛」と長年教え込んでしまった日本の文部省教育には困ったものがある。その最大の原因は、受験勉強対策化した学校と、生徒の主体性をなくした「受動的教育環境」だ。(最近は、受験勉強対策さえできずに、その機能を塾や予備校に取られているくらいだから、お寒い限りだ。)

日本の学校は、小学校から大学まで、すべて先生が一方的に話して、生徒は「話を聞いて、ノートを取る係り」みたいな場所で、とにかく静かにノートを一生懸命とった連中が優等生だった。しかし、アメリカの教育環境は雰囲気がまったく違う。そこには、先生と生徒の活発なコミュニケーションが存在する。

単に、「教える」という世界ではなく、「共に勉強する」世界だ。
だから、生徒は平気でとっても気楽に先生に質問を投げかける。もちろん、先生は知識豊富だからほとんどの答えは返せるが、時として知らないことにぶつかったりする。

でも、そこでの先生の対応が日本とかなり違う。
そんなとき、先生は知らなかったことに対して全く恥ずかしい素振りを見せない。それどころか、生徒に向かい「この質問の解答を知っている人はいますか?」と尋ね、知っている生徒がいればそれをその場で説明させ、先生もメモを取ったりする。そして、もしも誰も知らなかったら、「次回までに調べてきましょう」となるのだ。

厳格で、おっかない先生像なんて、アメリカにはたぶんほとんどないのだと思う。だから、先生もけして日本のように「先生面」していない。とてもフレンドリーだ。

先生から『教えてもらう』ではなく、先生から『教わろう』といった能動的な態度が感じられる。だから、どんなに難しいことを勉強していても、勉強が楽しいのだ。もちろん、単位を取るのが難しいからだが、自分から進んで勉強しようとしている能動的な態度は、前向きな姿勢を産み、図書館だって、いつでもいっぱいだし、大きな大学だと24時間図書館が開いているところだってたくさんある。

知りたいと思う気持ちが、自然にそういう態度に変わってくるものなんだと思う。日本の受験勉強みたいな「詰め込み」は人間を卑屈にしやすいけど、知りたいという「知識欲」があれば、勉強したくなるものなんだろう。

さて、これから100円玉を4枚持って本屋さんに行くあなたは、どんな気持ちでNHKのテキストを手に入れるのか?勉強の楽しさに、興奮とときめきがあったら、きっとあなたの英語は上達間違いなしでしょう。さあ、ご一緒に!(^^)v

[2000年4月20日発行]