「とりあえず外国人を採用」は危険。目的の曖昧さが失敗を招く理由と、成功企業の共通点
「グローバル化のために、外国人を採用したい」
この言葉自体に、実は大きな落とし穴があります。
確かに、多くの企業が海外展開や多様性の推進を掲げる中で、高度外国人財への関心は高まっています。
しかし、その一方で「なぜ採用するのか」「何を期待するのか」が曖昧なまま採用に踏み切ってしまう企業も少なくありません。
結果として起きるのが、
「思っていた活躍と違う」
「現場が使いこなせない」
「早期離職」
といった問題です。
関東に本社を置くメーカーD社も、まさにこの課題に直面していました。
同社は「今後は海外売上比率を上げていく」という経営方針のもと、初めて高度外国人財の採用に踏み切りました。採用したのは、海外大学出身で日本語も堪能な優秀な人材。経営層の期待も高く、「グローバル化の起爆剤になるはずだ」と社内でも注目されていました。
しかし、入社後すぐに問題が表面化します。
配属先の現場からは、「何を任せればいいのか分からない」という声が上がったのです。
海外展開といっても、実際の業務は国内中心。英語を使う場面も限定的。
「とりあえず通訳をお願いする」「海外資料を翻訳してもらう」といった業務が中心になり、本来期待していた“戦略的な役割”とはかけ離れていきました。
本人も次第に違和感を抱くようになります。
「自分は何のためにここにいるのか」
「この会社で成長できるのか」
その疑問は徐々に大きくなっていきました。
人事部も焦りを感じていましたが、「そもそも何を期待して採用したのか」が明確でなかったため、打ち手を見出せずにいました。
転機となったのは、経営会議でのある議論でした。
「我々は“外国人を採用すること”が目的になっていないか?」
この一言が、すべての前提を見直すきっかけになりました。
D社は改めて、「なぜ高度外国人財が必要なのか」を整理しました。
その結果、目的は大きく3つに分解されました。
1つ目は、海外市場に関するリアルな知見の獲得
2つ目は、海外顧客との関係構築の強化
3つ目は、社内の意思決定に多様な視点を取り入れること
この整理をもとに、既存社員の役割と高度外国人財の役割を再定義しました。
具体的には、単なる翻訳業務ではなく、海外市場調査プロジェクトのリーダーを任せることにしました。また、海外顧客との商談にも同席させ、「言語」ではなく「視点」として価値を発揮してもらう設計に変更したのです。
さらに、受け入れ部署に対しても、「なぜこの人材が必要なのか」を共有し、役割と期待値の認識を合わせました。
この変更により、状況は大きく変わりました。
本人は自分の強みを発揮できるようになり、提案の質も向上。海外市場に関する具体的な戦略提言が経営会議で採用されるまでになりました。
現場からも、「初めてこの人の価値が分かった」「もっと早く役割を明確にすべきだった」という声が上がるようになりました。
この事例から分かるのは、採用の成否は“人材の質”ではなく、“目的の明確さ”で決まるということです。
どれほど優秀な人材であっても、目的が曖昧なままでは力を発揮できません。逆に、目的が明確であれば、その人の強みを最大限に活かすことができます。
高度外国人財の採用は、「人を増やす施策」ではありません。
「組織をどう変えたいのか」という意思の表れです。
その問いに答えられないまま採用を進めると、ミスマッチは必ず起こります。しかし、その問いに向き合うことができれば、採用は組織変革の強力な起点になります。
「なぜ採用するのか?」
その問いを曖昧にしないこと。
それが、成功への第一歩です。
《今回のポイント》
- 採用目的が曖昧なままでは、高度外国人財は活躍できない
- 「外国人を採用すること」が目的化してしまうリスクがある
- 役割と期待値を明確にすることで価値発揮が進む
- 高度外国人財は“言語”ではなく“視点”で価値を生む
- 採用は組織変革の手段であり、目的ではない
異文化コミュニケーション研究所(R)は、「国費外国人留学生の紹介」、「グローバル人財の採用・活用に関するコンサルティング」のスペシャリストです。
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