「採用できたのに、なぜ活躍できないのか?」受け入れ態勢の不備で高度外国人財を失った企業の話
「せっかく優秀な外国人財を採用したのに、思ったように定着しない」
この悩みを抱える企業は少なくありません。
採用活動そのものには力を入れていても、入社後の受け入れ態勢まで十分に設計できている企業は、実は多くありません。
特に高度外国人財の場合、日本語力や専門性だけで判断してしまい、「入社後は現場で何とかなる」と考えてしまうと、ミスマッチが表面化しやすくなります。
ある中堅メーカーの人事責任者・田中さんも、そんな一人でした。
国内市場の縮小を見据え、同社は海外展開を本格化させる方針を打ち出していました。
そこで、海外営業や商品企画の強化を目的に、日本の大学院を卒業予定だったベトナム出身の留学生・リンさんを採用します。
リンさんは日本語も堪能で、研究テーマも同社の事業と親和性が高く、面接でも論理的かつ誠実な印象でした。
役員からの期待も高く、人事部としても「ようやくグローバル化への第一歩を踏み出せた」と手応えを感じていました。ところが、入社から数か月後、リンさんの表情は次第に曇っていきます。
最初の違和感は、配属初日の説明から始まりました。
業務内容についての説明は簡単に行われたものの、「まずは周囲を見て覚えて」「空気を読んで動いてほしい」という言葉が中心で、具体的な役割や期待成果は明示されませんでした。
上司も悪気があったわけではありません。日本人社員にはこれで伝わる、という感覚だったのです。
しかしリンさんにとっては、それが大きな不安につながりました。
自分は何を優先すべきなのか。
どこまで自分の判断で進めてよいのか。
なぜ会議では誰も本音を言わないのか。
質問をすると「そのうち分かるよ」と言われ、提案をすると「まずは前例を理解してから」と返される。
丁寧には接してもらえるものの、仕事を任せてもらえている実感は持てませんでした。
さらに問題だったのは、社内に相談できる相手がいなかったことです。
人事部は採用後のフォローを現場任せにし、現場は「本人が困っていたら言ってくるだろう」と考えていました。
日本人社員の多くは親切でしたが、英語での説明に自信がなく、業務外で積極的に話しかけることも控えがちでした。そ
の結果、リンさんは組織の中で少しずつ孤立していきます。
半年後の面談で、田中さんは初めてリンさんの本音を聞くことになります。
「この会社に貢献したい気持ちはあります。でも、何を期待されているのか分かりません。自分の強みを活かせる場面も少なく、相談しても遠慮されているように感じます」
田中さんは驚きました。
人間関係に大きなトラブルはなく、本人も真面目に勤務していたため、順調だと思い込んでいたのです。
ところが、その2か月後、リンさんは退職を申し出ました。退職理由は「より自分の専門性を活かせる環境に移りたい」というものでした。
この出来事は、会社に大きな問いを残しました。
本当に問題だったのは、リンさんの適応力だったのでしょうか。
それとも、受け入れる側の準備不足だったのでしょうか。
社内で振り返りを行うと、課題は明らかでした。
まず、採用の目的は「グローバル化の象徴をつくること」に偏り、入社後にどの部署で、どのテーマに、どのレベルの責任を持ってもらうのかが曖昧でした。
次に、現場の管理職が高度外国人財をマネジメントする前提知識を持っていませんでした。
日本人同士では暗黙知で回っていたコミュニケーションが、外国人社員には通用しない場面があるという認識が不足していたのです。
さらに、生活面・心理面・業務面の3つを支える伴走体制もありませんでした。
この失敗をきっかけに、同社は受け入れ態勢を抜本的に見直しました。
まず、採用時点で「なぜこの人を採るのか」「どの業務で成果を出してほしいのか」を明文化。配属部署とも事前にすり合わせを行い、入社後3か月、6か月、1年で期待する役割を言語化しました。
次に、直属上司だけでなく、業務相談役と生活相談役の2名を設定。仕事上の疑問と、職場適応や日常生活の不安を分けて相談できるようにしました。
また、管理職向けには「曖昧な指示を減らす」「背景を説明する」「評価基準を具体的に伝える」といった実践的な研修も行いました。
その後、同社は再び高度外国人財の採用に取り組みました。
次に入社した社員には、担当ミッション、期待成果、相談先、育成計画が最初から共有されており、現場の関わり方も明らかに変わっていました。
結果として、その社員は海外取引先との商談準備や新規市場調査で存在感を発揮し、周囲の日本人社員にも良い刺激を与える存在になったのです。
この事例が教えてくれるのは、高度外国人財の活躍を左右するのは「本人の能力」だけではないということです。
どれほど優秀な人でも、受け入れ側の設計が曖昧であれば、力を発揮できません。
逆に言えば、受け入れ態勢を整えることで、企業はその人財の専門性・視点・発想を組織の力に変えることができます。
高度外国人財の採用は、採って終わりではありません。
本当の勝負は、入社後に始まります。
「活躍できない人を採ってしまった」のではなく、「活躍できる環境を用意できていたか」。
この問いを持つことが、これからの日本企業にとってますます重要になるはずです。
《今回のポイント》
- 高度外国人財の定着・活躍は、本人の能力だけでなく受け入れ態勢に大きく左右される
- 「空気を読む」「見て覚える」といった曖昧な指示は、ミスマッチや不安を生みやすい
- 採用目的、職務内容、期待成果を事前に明確化することが重要
- 業務面と生活面の両方を支える相談体制が、早期離職の防止につながる
- 管理職のマネジメント理解が、受け入れ成功の鍵になる
【ご案内】
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■ 日時:2026年6月24日(水) 14:30〜19:00(受付開始14:00)
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■ 新規分参加企業数:5社のみ
■前回実績:参加留学生プロフィール(抜粋)
「世界トップレベルの研究・専門性」を持つ学生たちが集結しました。
エジプト 東京大学 大学院 修士:工学系研究科(社会基盤学)
フランス 早稲田大学 大学院 博士:基幹理工学研究科(数学)
中国 慶應義塾大学 大学院 博士:理工学研究科(情報工学)
マレーシア 東京科学大学 大学院 博士:工学院(機械系)
アメリカ 東京科学大学 大学院 修士:物質理工学院(材料科学)
スペイン 慶應義塾大学 大学院 修士:理工学研究科(JEMARO/ロボティクス)
【前回参加者のバックグラウンド】
主要大学: 東京大学、東京科学大学(旧東工大)、早稲田大学、慶應義塾大学、横浜国立大学、電気通信大学 ほか
学位: 博士課程・修士課程の院生が中心
専門分野: 機械工学、情報理工(AI・IT)、材料科学、数学、公共政策など
お問い合わせお待ちしております。
異文化コミュニケーション研究所(R)は、「国費外国人留学生の紹介」、「グローバル人財の採用・活用に関するコンサルティング」のスペシャリストです。
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