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「話しているのに伝わらない」—高度外国人財とのコミュニケーションで起きた失敗とその教訓

「ちゃんと説明しているのに、なぜ伝わらないのか」
これは、多くの日本企業の現場で実際に起きている悩みです。

特に高度外国人財を採用した企業では、「日本語も話せるし、優秀なはずなのに、なぜか意思疎通がうまくいかない」という違和感が生まれることがあります。
しかし、その違和感の正体は“語学力”ではなく、“コミュニケーションの前提の違い”にあることが少なくありません。

あるIT企業では、海外大学出身のエンジニアを採用しました。
技術力は高く、日本語も日常会話レベルでは問題なし。
チームへの期待も大きく、「すぐにプロジェクトの中心メンバーになってくれるだろう」と考えられていました。

しかし、数ヶ月後。
現場のマネージャーからはこんな声が上がります。

「指示した内容と違う成果物が出てくる」
「認識がズレているのに、途中で確認してこない」
「会議でも発言が少なく、考えていることが分からない」

一方で、本人はこう感じていました。

「指示が曖昧で、何が正解か分からない」
「質問したいが、何度も聞くと評価が下がる気がする」
「会議で意見を求められていないのに発言するのは失礼ではないか」

つまり、お互いに「相手が当然こうするはず」と思っている前提が、大きく食い違っていたのです。

日本人マネージャーは、「分からなければ自分から聞くべき」と考えていました。
一方で本人は、「指示は具体的に与えられるもの」「勝手な判断は控えるべき」と捉えていました。

結果として、プロジェクトは遅延。
最終的には「この人は期待外れだった」という評価が下され、本人も自信を失い、1年以内に退職してしまいました。

しかし、後から振り返ると、この失敗は避けられたものでした。

問題は「能力」ではなく、「すり合わせ不足」だったのです。

この企業が見落としていたのは、以下の3点です。

1つ目は、「期待するコミュニケーションスタイルの共有」です。
例えば、「途中で必ず進捗確認をしてほしい」「不明点は遠慮なく聞いてよい」といったルールを明文化していませんでした。

2つ目は、「曖昧な指示のリスク」です。
「いい感じにまとめておいて」「前回と同じように」といった表現は、日本人同士でも誤解が生じます。まして文化背景が異なれば、解釈はさらにズレやすくなります。

3つ目は、「心理的安全性の設計」です。
質問や意見を出すことが歓迎されるのか、それとも控えるべきなのか。
これが明確でない職場では、外国人財はより慎重になり、結果として“受け身”に見えてしまいます。

もしこの企業が最初から、
「分からない時は必ず確認してほしい」
「途中経過でもいいので共有してほしい」
「意見は遠慮せずに出してほしい」
と明確に伝え、さらにそれを歓迎する姿勢を示していれば、結果は大きく変わっていた可能性があります。

高度外国人財とのコミュニケーションで重要なのは、「伝えること」ではなく「伝わる設計」をすることです。

日本語で話しているかどうかは、本質ではありません。
むしろ重要なのは、前提・期待・判断基準をどこまで言語化できているかです。

「言わなくても分かる」は、強みでもあり、リスクでもあります。
特に多様な人財が集まる組織においては、それが大きな誤解の原因になることもあるのです。

コミュニケーションの質は、個人の努力だけではなく、組織の設計によって大きく左右されます。

「伝わらない」のではなく、
「伝わるように設計されているか」

その視点を持つことが、これからの企業には求められています。

異文化コミュニケーション研究所(R)は、「国費外国人留学生の紹介」、「グローバル人財の採用・活用に関するコンサルティング」のスペシャリストです。


《今回のポイント》

  • コミュニケーションの問題は語学力ではなく“前提の違い”で起きる
  • 「察する文化」は外国人財との間でズレを生みやすい
  • 期待する行動・報告ルールを明文化することが重要
  • 曖昧な指示はミスの原因になるため具体化が必要
  • 「伝える」ではなく「伝わる設計」が鍵になる

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主要大学: 東京大学、東京科学大学(旧東工大)、早稲田大学、慶應義塾大学、横浜国立大学、電気通信大学 ほか
学位: 博士課程・修士課程の院生が中心
専門分野: 機械工学、情報理工(AI・IT)、材料科学、数学、公共政策など
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