第1話 はじめに
留学、最近「駅前留学」なんて言葉も流行っているけど、やっぱり狭い部屋で一週間に一度しか会わない英語の先生と会話したって、本当の留学の醍醐味なんて味わえない。留学の楽しみは、生活体験そのものだからね。
外国でしか勉強できない内容なんて、今やインターネットで何でも手に入れられる世の中ではほとんどないんじゃない?それでも多くの人が「留学」って言葉に心をくすぐられるのは何故なんだろう?それはきっと日本人の中にある『本能』のせいじゃないかな?だって、日本は海で囲まれていて、私たちの祖先の多くは船に乗ってこの土地に着いたに違いないからね。その冒険心がDNAに刷り込まれているんだよ、きっとね。それに正直になったっていいじゃない。
外国は、言葉が違うだけじゃなく文化も違うんだから、そこで生活すればそりゃいろいろある。多分、留学経験だけじゃなく、海外旅行(パック旅行はだめだけどね)をしたことがある人はみんなそれぞれに「思い出」があるはずだ。楽しい思い出や、苦い経験、恥ずかしくて思い出したくもないこと、等々、その人たちの話を聞くだけでも、楽しいもんだ。
でも、どんなに話を聞いても自分の経験じゃない。やっぱりその場にいないと。そう!当事者じゃなければ、単に話しを聞いたって、自分の「実」にならない。僕がこの本を書こうと思った理由は、その当事者に「君」にもなってもらいたいからだ。
世の中は物騒だ。
テレビをつければ外国でのテロや、銃の乱射やらで多くの罪のない人が亡くなったりしている。だから、留学をする君だって、はっきり言って銃で撃たれて殺されるかもしれない。でも、世界中のどこにいたって結局同じことなんだよね。怖がっていて家の中に閉じこもっていて長生きしたって、そんな人生つまらないじゃない?それに、本当に長生きできると決まったわけじゃないんだから、心を開いていろいろな人に会って、いろいろな経験をしようじゃない。
世の中には多くのマニュアルがあって、留学に関しても本屋さんに行ったら山ほどデータがころがっている。確かに参考書としては有用だから、ある程度は目を通した方がいいけど、でも受験参考書と同じように、その参考書を丸暗記しても、実際にその問題が試験に出てくる可能性はほとんどないのと同じで、そんなものはあくまで「参考」だからね。だから、この本は参考書にするつもりは全然ない。僕の実体験に基づいた「教訓書」だと思って読んでくれればありがたい。
この本を手にしている君は、間違いなく「留学」に興味を持ってくれているはずだ。期待とともに不安な気持ちがあるのも事実だろうけど、それも数年後に帰国してきたときには良い思い出になるものだからね。これは保証するよ。
君が帰ってきたら、「私はこんな経験もした!」って書いてもらいたいね。
[1999年10月7日発行]