コラム

第34話 いまだにパールハーバー

5月の最終月曜日は、アメリカのメモリアルデーです。
あまりメモリアルデーの記憶はないのですが、その代わり真珠湾攻撃の日(開戦の日)に関して今回は書きます。

1941年12月7日、当時の大日本帝国がアメリカのパールパーバーを爆撃した。日本の外務省の怠慢で、宣戦布告がアメリカ政府に届く前に、日本海軍が攻撃をしかけたことになってしまい、日本は「ずる賢い国だ」という悪いイメージがアメリカの人達についてしまった。残念ながら、未だにその影は尾をひいている。

私の手元に20世紀の出来事をまとめた「OUR TIMES」(ViCARIOUS社発売1996年版)というCD-ROMがある。その中で、真珠湾攻撃のシーンが大きな見だしとして出ている。考えてみれば、アメリカの歴史において戦争を仕掛けられた国は唯一日本だけだから、(独立当初は別として)歴史的な一大事件になることはよく分かる。しかし、それにしてもアメリカ人の感性はちょっと異常だと思ったことがある。

それはちょうど開戦記念日(爆撃記念日?)の40年目の朝、なんと朝刊の一面でそれもカラーで真珠湾攻撃の写真がド~ンとでていたのだ!

アメリカでは日本みたいに、全国新聞は非常に少なく、それぞれの地域の新聞会社が独自に新聞を作っているから、アメリカ中の新聞で同じ記事構成になっていたとはもちろん思わないが、たまたま冬休みにホームステーさせてもらっていたテネシー州のホストファミリーでみた新聞はそうだった。アメリカの軍艦が爆撃されて、大きな煙をもくもくと上げながら半分沈没している様子がその写真だ。

記事の内容は覚えていないが、その新聞を見て「何を今更」と感じてしまった。1980年代、日本は飛ぶ鳥を落とす勢いで繁栄していたから、アメリカでは反日感情が非常に高まっていた。そんな背景があるからかもしれないが、それにしてもそんな記事が大見出しで出てくるなんて、ちょっと大人気ない。だって、あの無差別殺人を行った、広島や長崎の原爆投下の日、その日の朝刊にあの「きのこ雲」の写真を大々的に載せてたらどういうことになるだろう。そう考えたら大体見当がつく。

いまだにパールハーバーに関してのアメリカ人の感情がかなり残っているのは仕方ないにしても、自分の立場を考えて行動する必要があるのではないだろうか。大国としてのアメリカは、常に冷静に対処することが求められると思うからだ。アメリカは今も、そして、これからも世界一の国でありつづける可能性がとても高い。イラクへの攻撃、コソボ問題等々で、アメリカは常に軍事力を行使し、人道的な立場から「世界の警察」を自称し、そういう行動をとってきた。…と、言われているが、いずれにせよ『軍事力』であることには変わりない。暴走しないよう、とても注意が必要だ。

今日の日本の発展があるのは、アメリカの占領地政策のおかげであるのは事実だし、かなりの面でアメリカの考え方には賛同できるが、私の会ったアメリカ人を見ると、ちょっと気に掛かることがある。それは、一般的なアメリカ人は歴史を「表面ずら」で理解する点だ。だから、どうしても「感情論」が先に立ちやすいように思える。たとえば、たしかに、日本は宣戦布告なしに真珠湾の攻撃をしかけてきたという事実はあるが、どうして日本がアメリカなんて『超大国』に戦争を挑んだのか、という質問に対して私の知る限りほとんどのアメリカ人はその理由を知らなかった。

留学して、率直な意見を言い合える友達が出来たら、そういう点をよく話し合うといいだろう。表面的な相互理解ではなくて、もっと深い理解をお互いができるようになるから…。さて、12月7日の朝刊。今年は、どんな記事がトップを飾るのだろう…?

(注釈)真珠湾攻撃は、日本ではすでに1941年12月8日。そんじゃ!(^^)

[2000年6月1日発行]