コラム

第26話 旅行 – 番外編 -人種差別

あれだけ多民族の人達が住んでいるアメリカでも、今だにしてアメリカには歴然と人種差別が存在する。

最近でも、ある判決でクリントン大統領が「背景には人種差別が存在する」なんて発言をしていたくらいだから、実際の一般社会でどれだけ多くの問題が隠れていることか、…アメリカの病巣の一つとして把握しておく必要がある。

ただ、だからと言って日本人留学生があからさまに「差別」されることはほとんどないだろう。なぜなら、背景にある文化、高い教育レベル、そして経済力があるからだ。経済的に低迷している日本ではあるが、やはり「屋台骨」はまだまだしっかりしているということだろう。先人達に感謝しよう。

人種差別を客観的に見ると、背景には「教育レベルの低さ」が問題として存在する。それはどういうことかと言うと、十分な教育さえ得ていれば、人種差別があるとは言っても基本的には平等な機会が与えられているため、社会人として成功することができるからだ。ちなみに、アメリカの上流階級はやはりどうしても白人が占めているが、黒人や東洋人がいないわけではないことからもそれはわかる。

ところで、私が言っている教育とはけして高度な教育ではない。一般的な読み書き、計算能力、交渉力、忍耐強さ、マナー等のことだ。私が肌で感じた差別は、「肌の色」ではなく単にそう言った教育の低さに基づくものだったと思う。当たり前のことを当たり前に出来ない人種へのアメリカ人の冷たい視線ってすごいものがある。

さて、なぜ今回は人種の話をまたしているかと言うと、旅行の途中、ワシントンでの出来事が忘れられないからだ。あれは、FBIを見学に行ったときだ。

日本で警視庁や自衛隊のビルの見学コースがあるのかどうか私は知らないが、あの有名なFBIの本部ビルには見学コースがあるのだ。ワシントンに訪れる人は一度見学に行くといいだろう。ビルの中に入るときに荷物のチェックをされるが、一般観光客用にルートが設定されていて、FBIの人がガイド役になって、FBIに関する話を過去アメリカで起こった犯罪史の展示を見せながら教えてくれる。あのアンタッチャブルのアルカポネの写真なんかもあったと記憶している。

旅の途中で会った人に勧められてこのFBIのビルへの見学に行ったのだが、その人は防音設備の中で銃を撃たせて貰ったと話していた。私もワクワクして行ったのだが、防弾ガラスで囲まれた施設の中で誰かが銃を撃つ練習をしていただけで残念ながら私のツアーではその機会は準備されなかった。(ちなみに、私は残念ながら今まで一度も銃を発射したことがない。)

さて、私が驚いたのは実はそのFBIでのツアーそのものに対してではなく、ある参加者に関してだ。それは、とっても「美人の黒人女性」と、なんとも「みすぼらしい白人男性」とのカップルがベタベタしてそのツアーに参加していたからだ。

とても不思議な光景だった。
それは、彼ら二人のことだけではなく、なんとそのツアーに参加していた全ての人(白人の人も黒人の人も)が彼ら二人を驚嘆の目で見つめていたからだ。ツアー開始を待っているときなど、全員が彼らをちょろちょろと見ていた。

みんなそれぞれに思うことがあったのだと思うが、たぶん一番大きいことは、黒人女性と白人男性が恋人の関係にあることに対してだと思う。アメリカでも未だにして白人と黒人のカップルは非常に少ない。やはり、超え難い何かが存在するのだろう。

私は、そのとき一種の違和感を感じていた自分に驚いてしまった。
人種差別はしてはいけないと思っていても、自分の中にそうやって違和感を持って人のことを見つめる自分いる、それが情けなくもあった。これから何百年必要か分からないが、人類が単に「肌の色」だけで人を差別することがなくなることを切に望みたい。

ちなみに、私の友人(女性)でナイロビの男性と結婚して幸せな生活をおくっている人がいる。彼女にはかわいい息子がいるのだが、私は一切そういった感情(違和感)を抱かない。他の子供と同じで、物事の良し悪しを教えたいと思うし、しっかりした大人に成長して欲しいと思う。そして何より幸せな人生を送ることを望んでいる。

旅行をしていた当時に比べて成長したのか、単に友人の子供だからそう感じるのか私自身はっきりしないが、少なくともこういう積み重ねが人を成長させるのではないかと思っている。ワシントンで出会ったあのカップルがその後どうなったかは知る由もないが、もしも結婚していたら幸せになっていて欲しいと思う。(^^;)

[2000年3月30日発行]