コラム

第48話 退学になる!?

会社に入ってしまうと、一年なんてあっという間だ。

特にほとんど外出をしない職種の場合、朝夕の通勤時間以外は外に出ないこともあって、一年中エアコンの中で生活する。そのため、季節感でさえなくなってしまう。マ~、年齢と共に一年一年が短く感じられるのも事実だが、年齢的に若いというだけでなく、学生の頃の一年間は結構長く感じられる。学期毎に違う先生やクラスメイト、それに(思い出すのもイヤだが)定期的に試験があり、それを乗り越えると一年間のご褒美の夏休みが控えている(^^)。そう考えると、学生時代はなかなかバラエティに富んでいるわけだ。もちろん、その中でいろいろな経験が出きる。出来の悪い学生だった私は、留学の期間何度か「危機」に遭遇した。マ~、事故や事件に巻き込まれるというわけではなく、学校から追い出される….、つまり『退学』の危機だ。(f^^;)以前書いたが、「Drop & D、F」だった学期はその一つだったと思う。(@_@)オハズカシイ…..そして、実はもう一回ヤバイことになりそうだったことがあった。今回はそれを皆さんにご紹介したい。(^^;)あれは、カフェテリアでの出来事。以前ある留学生が、非常識な行動をとったために、カフェテリアで日本人の評判が下がった話を書いたが、ちょうどその頃のことだ、私もやってはいけないことをしてしまったのだ。以前、ハロウィーンのお化け屋敷に行った話を書いたが、その女の子のことを覚えているだろうか?そう、彼女の名前はブレンダ。グラマーというよりは、『お相撲』系の体格をした女の子だ。(f^^;)彼女には妹が二人いて、一人は当時高校生だった。その子の名前はシーラ、キャピキャピの高校生って感じで、よく笑っていた。ブレンダ妹だったということで、私はシーラとも友達になり、みんなで結構遊んだ。ある日、数ヶ月ぶりにシーラがブレンダのところに遊びに来た。たまたま、夕食を食べに行こうとカフェテリアの前を通りかかったときに、私はばったりシーラと出会ったのだ。いつものようにハグをして、冗談を交わしながら、何をしているのか?と尋ねると、姉のブレンダを探していると言っていた。私は多分カフェテリアで食事でもしているんじゃないかな~。と言い、「それじゃ、一緒に中を探そう」ということになった。私の通っていた大学のカフェテリアは、寮やクラス棟と別の建物になっており、中に入るためには、食費納入済み証明のシールを貼った「学生証」を見せるか、もしくは一回分のお金を払った人しか入れない仕組みになっていた。もちろん、何も食べなければお金を払う必要はない。私たちはカフェテリアに入り、私は料理を取るラインに並び、彼女はブレンダを探しにテーブルの方へ行った。カフェテリアは広いとは言っても、全体を見渡すのに3分とかからない。シーラはぐるりと歩きながら各テーブルを見てまわったが、残念ながらそこにはブレンダはいなかった。ちょうど夕食時間ということもあって、カフェテリアは混雑していた。いないことが分かると、シーラは気を効かせてくれて、私のテーブルを確保してくれた。その様子を見て、私は結構嬉しくなり、いつもより多めに料理や、デザートのケーキを取って、席にいるシーラに食べさせて上げようと思った。トレーにいっぱいになるくらい、たくさんの皿の乗せた私は(ちなみにバイキングスタイルのため、どれだけ食べても同じ料金)、シーラのいる席に行って、「お腹空いているだろう?食べな。」と言って彼女の前にケーキの皿を置いてあげた。シーラは育ち盛りの高校生だから、ケーキを見るやいなや、大喜びして早速食べ始めた。……。それから間もなく、私は背後にイヤ~な人影を感じた。振り向くと、以前私に向かって”White Elephant”と言ったあのカフェテリアのマネージャーが、イライラした顔立ちでシーラに質問をした。それも、かなりきつい口調で『お金は払ったのか?』…と。そのときに、私はハッとした。少しくらい上げる分には良いだろう。と軽い気持ちでケーキを渡した私は、これが『無銭飲食』になることを忘れていたのだ。サ~、大変!!私の目の前では、高校生の女の子が、突然大人から叱られてオドオドしている。そう、その原因を作ったのは私なのだ。私は、必死になって、そのマネージャーに「彼女は私のゲストで、少しくらいなら良いと思って上げたのだ。悪いのは私だ。許してやってほしい。」と説明し、謝った。しかし、日本人に対して根深く悪い印象を持っていたそのマネージャーは、「これは、ペナルティーだ。学長に話す!!!」と、怒鳴りつけるように私に言って、クルリと背中を向けて立ち去って行った。……、私は焦った!無銭飲食をさせてしまった罪で退学になる!と思ったからだ。その夜、私はどうしたらこの事態を乗り越えることができるかと必死になって考えた….。次の日の朝9時ごろ、土曜日だったが、大学の近くにある学長の住んでいたちょっとした城のような雰囲気の建物の前に私は背広姿で立った。気持ちを落ち付けて、深呼吸をし、呼び鈴を鳴らしてドアが開くのを待った。すぐに、中から学長がドアを開けてくれた。私は広い応接間に入ると、手短に自己紹介をし、昨日起こったことを説明し、退学になったら困るからと、必死になって陳謝した。そう、私はカフェテリアのマネージャーが学長に「ちくる」前に謝っておこうと考えたのだ。(f^^;)学長は、なんだそんなことか….。といった顔をして、私の話を聞いた後「心配いらない」と言ってくれた。そして、他にこれから用事があるのだろうか、私の肩を抱いて早く帰れとばかりに、ドアの方にエスコートし、もう一度「大丈夫だから」と言ってくれた。とにかく、この件は事も無く過ぎた。しばらくして、そのマネージャーの姿が見えなくなったのでホッとしたのだが、風の噂によると小学校の教師になったと聞いた。今になって考えると、多分私の取り越し苦労、考えすぎなのだが、そのときは本気で「退学になってしまう!」と悩んでしまった。マ~、とくにこれと言ってお咎めもなく過ぎたので笑い話だが、もしも本当に退学になんてなってしまったら、大恥をかくところだった。なんせ、無銭飲食で退学させられた….ってことになるのだから。(^^;)皆さん、気をつけましょうね。それでは![2000年9月7日発行]