
“平等”とは、一人一人に”適切”な機会を与えること
とある会社の実話です。
せっかく高度外国人財(Globalフォース)を採用したのに、日本人の新卒と同じような教育の仕方をしたため、結果として、半年で辞めてしまったのです。
日本の大手ペイントメーカーの技術部門に「即戦力」として採用されたはずのインド人のAさんは、同者では初めてのGlobalフォースということもあり、期待をもって会社も迎え入れました。
大学院では、AIを活用した研究実績もあり、英語はもちろん、日本語能力試験N1も保持して、日本文化にも理解がありました。入社前の面接では、「最先端の技術開発に関われる」という話を聞き、希望に胸を膨らませていたそうです。
しかし…
「驚いたのは、電話応対、名刺交換といった業務と関係のない”ビジネスマナー教育”ばかり…。」
「もちろん、日本のやり方に合わせることも大切だとは思います。でも1ヶ月経っても、専門的な仕事が何も始まらない。」
「文系の同期と一緒に、基本的なプログラミングの教育まであり、どんどんモチベーションが下がっていきました。」
「上司に”なぜここでAIのプロジェクトが始まらないのか”と聞いても、『順番だから』『全員一緒だから』という答えしか返ってこなかったのです。自分は“能力”で評価されたのではないのだと、落胆してしまいました。」
彼は半年後に、静かに退職しました。
それから間もなくして、彼はIT系のスタートアップ企業に就職しました。
この企業では、Globalフォースの受け入れにあたり、「入社時評価制度」を設けていました。面接や実技試験の結果に基づいて、初期配属や研修内容を柔軟に設計するものです。新卒・中途・国籍問わず、「経験とスキルベース」で初日から専門チームに配属される仕組みです。
この会社でも、その制度に当初は不安があったそうですが、実力主義でめきめき成果を上げるGlobalフォースに他の日本人たちも、モチベーションがアップしたそうです。
ビジネスマナーについては、その場、その場で、教えることで、自然に日本式の対応も身についていったようです。
彼はとても喜び「自分の力がちゃんと評価されていると感じる」と話していました。
この企業の代表はこう語っています。
「”平等”というのは全員に同じ機会を与えることだと思われがちですが、私たちは”適切”な機会を与えることが本質だと考えています。実力を持つ人には、それを発揮できる場所とタイミングを。そうでないと、会社も人も、損をします」
“平等”に揃えることと、“適切”に活かすこと。
あなたの会社が採っているのは、どちらのアプローチですか?
大切なのは、「その人にとって、最も力を発揮できるスタート」できる制度かどうかではないでしょうか?
異文化コミュニケーション研究所(R)
代表取締役 島崎ふみひこ