note

外国人採用を始めたのに、なぜ活躍につながらないのか――“採ること”が目的になっていた会社の気づき

「せっかく優秀な外国人材を採用したのに、思っていたような活躍につながらないんです。」

ある日、製造業を営む中堅企業の社長が、少し困った表情でそう話してくれました。
その会社では初めて、高度外国人財の採用に踏み切りました。日本語力も高く、専門知識もあり、面接でも非常に優秀な印象だったそうです。社内では「これから会社を変える存在になるかもしれない」と期待が集まっていました。

ところが、入社して数か月が過ぎても、周囲が期待していたような変化は起きませんでした。
本人はまじめに働いている。与えられた仕事もきちんとこなしている。けれど、会社としてはどこか物足りなさを感じていたのです。

「もっと新しい提案をしてくれると思っていた」
「海外との橋渡し役になってくれると考えていた」
「将来の海外展開の中心になってほしかった」

社内からはそんな声が上がりました。
しかし、よくよく話を聞いてみると、実はそのどれも、本人には明確に伝えられていなかったのです。

入社時に伝えられていたのは、「まずは既存業務を覚えてほしい」「社内に慣れてほしい」という内容が中心でした。
一方で、経営陣の頭の中には、「外国人を採用する以上、会社に新しい風を吹き込んでほしい」「将来の海外戦略の起点になってほしい」という期待がありました。
つまり、会社の中で“採用した目的”が言語化されないまま、期待だけが先に膨らんでいたのです。

この状態は、実は少なくありません。

高度外国人財を採用する企業の中には、「外国人採用に取り組んでいる会社になりたい」「グローバル化に向けて何か始めたい」「優秀そうだから採ってみたい」という動機が先行し、採用そのものが目的化してしまうケースがあります。
もちろん、その一歩自体は大切です。
ですが、採用の目的があいまいなままでは、本人に何を期待するのか、どんな役割を担ってもらうのか、どのように評価するのかが定まりません。

その結果、本人は「何をすれば評価されるのか分からない」と感じ、会社は「期待したほどではない」と感じる。
お互いに大きな不満はないのに、少しずつズレが広がっていくのです。

この企業でも、状況を整理するために、まず経営陣と現場の管理職が集まり、そもそもなぜ高度外国人財を採用したのかを改めて話し合いました。
すると、目的は大きく3つに分けられることが分かりました。

1つ目は、海外取引先とのコミュニケーション強化。
2つ目は、社内に多様な視点を取り入れること。
3つ目は、将来の海外展開に向けた人材基盤づくり。

この3つが整理されたことで、ようやく「今すぐ任せる役割」と「将来的に期待する役割」を分けて考えられるようになりました。

そこで会社は、本人との面談の場で、期待を丁寧に共有し直しました。
現在は国内業務を理解する期間であること。
そのうえで、半年後には海外取引先対応の一部を担ってほしいこと。
さらに将来的には、外国籍社員ならではの視点を活かして、商品提案や市場理解にも関わってほしいこと。

すると、本人の表情が大きく変わりました。
これまでの彼は、与えられた業務を正確にこなすことが最優先だと考えていました。余計なことをしてはいけない、まずは日本の職場文化に合わせなければならない、そう思って慎重に行動していたのです。
けれど、会社が本当に期待していることが分かったことで、自分の専門性や視点をどこで出せばよいのかが見え始めました。

その後、彼は少しずつ会議で意見を出すようになりました。
海外の顧客視点を踏まえた資料改善の提案をしたり、英語での情報発信の見直しに関わったり、社内のメンバーにも新しい観点を共有するようになりました。
周囲も、「なぜこの人を採用したのか」が明確になったことで、関わり方が変わっていきました。

採用の成功は、優秀な人を採ることだけで決まりません。
その人を、何のために採用するのか。
どんな役割を期待するのか。
今すぐ求めることと、将来的に期待することをどう切り分けるのか。
そこまで言葉にできて初めて、採用は活躍につながっていきます。

高度外国人財の採用は、単なる人手不足対策ではありません。
企業の未来に新しい可能性を持ち込む、大切な経営の選択肢です。
だからこそ、「採ること」ではなく、「なぜ採るのか」から始めることが重要なのです。

《今回のポイント》

高度外国人財の採用がうまくいかない背景には、採用の目的があいまいなままになっていることがあります。
採用前に「何のために採るのか」「どんな役割を期待するのか」「短期と中長期で何を求めるのか」を明確にすることで、採用後の活躍と定着は大きく変わります。

異文化コミュニケーション研究所(R)は、「国費外国人留学生の紹介」、「グローバル人財の採用・活用に関するコンサルティング」のスペシャリストです。


#高度外国人財
#外国人採用
#グローバル人財
#採用戦略
#人事戦略
#異文化コミュニケーション
#ダイバーシティ経営
#外国人社員活用
#組織づくり
#経営戦略