note

「日本語は話せるのに、なぜ伝わらない?」を解消した企業のコミュニケーション改革

「日本語は問題ないはずなのに、なぜか意思疎通がうまくいかない」
高度外国人財を採用した企業から、こうした声をよく聞きます。

会話は成立している。指示も理解しているように見える。
しかし、いざ仕事を進めると認識のズレが生じる。期待していたアウトプットと違う。報告のタイミングも微妙にずれている。
その結果、「言ったはずなのに」「聞いていない」というすれ違いが積み重なっていきます。

関西に本社を置くサービス企業C社も、同様の課題を抱えていました。
同社は海外顧客対応の強化を目的に、英語と日本語の両方に堪能な外国人スタッフを採用。語学力の高さから、社内でも「コミュニケーションの問題は起きにくいだろう」と期待されていました。

しかし実際には、別の問題が発生しました。
上司が「できれば今週中に対応しておいて」と伝えた業務が、金曜日の夕方まで手つかずだったり、会議で「検討しておきます」と言った内容が、そのまま進んでいなかったりするケースが続いたのです。

上司は次第に不満を感じ始めました。
「優秀だけど、主体性が足りないのではないか」
一方で本人も、「指示通りに動いているのに評価されない」という違和感を抱えていました。

人事担当者が間に入り、双方へのヒアリングを行ったところ、興味深い違いが見えてきました。

日本人上司にとっての「できれば今週中」は、「優先度が高く、なるべく早く」という意味合いでした。
しかし本人にとっては、「今週中でも来週でもよい、比較的余裕のある依頼」と受け取られていたのです。

また、「検討しておきます」という表現も、日本人の文脈では「前向きに進める可能性が高い」というニュアンスを含みますが、本人にとっては「一度考えてみるが、実行するとは限らない」という意味でした。

つまり問題は、日本語能力ではなく、「言葉の裏にある意図」の共有ができていなかったことにあったのです。

この気づきをもとに、C社はコミュニケーションのあり方を見直しました。

まず取り組んだのは、「曖昧表現の削減」です。
「なるべく」「できれば」「一応」といった表現を使う場合には、必ず具体的な期限や優先順位を補足するルールを導入しました。

次に、「期待値の明確化」です。
依頼時には、「何を」「いつまでに」「どのレベルで」求めているのかをセットで伝えるようにしました。

さらに、「確認の文化」を強化しました。
指示を受けた側が、「理解した内容」を自分の言葉で言い直す“リキャップ”を習慣化したのです。

これらの取り組みを続けた結果、わずか数か月で変化が現れました。
業務の手戻りが減り、報告のタイミングも改善。会議での認識のズレも大幅に減少しました。

そして何より大きかったのは、双方のストレスが減ったことです。
上司は「ちゃんと伝わっている」という安心感を持てるようになり、本人も「何を期待されているか分かる」という状態になりました。

この事例が示しているのは、コミュニケーションの問題は「語学力」だけではないということです。
むしろ重要なのは、「暗黙の前提」をどれだけ言語化できるかです。

日本企業では、「言わなくても分かるだろう」という前提が根強く残っています。しかし、多様な人材が働く環境では、その前提は通用しません。

高度外国人財とのコミュニケーションを改善することは、単なる対応策ではなく、組織全体の生産性を高める取り組みです。
曖昧さを減らし、期待値を明確にし、相互確認を徹底する。
これらはすべて、誰にとっても働きやすい職場をつくる基盤となります。

「伝えたつもり」をなくすこと。
それこそが、グローバル人材活用の第一歩なのです。


《今回のポイント》

  • コミュニケーションの問題は語学力ではなく“解釈の違い”にある
  • 日本語の曖昧表現が認識ズレの原因になる
  • 「何を・いつまでに・どのレベルで」を明確に伝えることが重要
  • リキャップ(言い直し)で認識のズレを防ぐ
  • 明確なコミュニケーションは組織全体の生産性向上につながる

異文化コミュニケーション研究所(R)は、「国費外国人留学生の紹介」、「グローバル人財の採用・活用に関するコンサルティング」のスペシャリストです。


#高度外国人財 #外国人採用 #コミュニケーション #異文化理解 #組織改善 #人事戦略 #グローバル人材