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「評価しているつもり」が離職を招く—高度外国人財が静かに去る会社の共通点

「きちんと評価しているのに、なぜ辞めてしまうのか」
この問いに答えられない企業は少なくありません。

評価面談も実施している。
フィードバックもしている。
昇給もしている。

それでも、高度外国人財はある日、静かに会社を去ります。

関東に本社を置くIT企業E社でも、同じことが起きていました。
同社は海外展開を見据え、優秀な外国人エンジニアを複数採用。技術力も高く、日本語での業務にも問題はありませんでした。

実際、上司からの評価も決して低くはありません。
「安定している」
「真面目に取り組んでいる」
「問題は特にない」

しかし入社から1年半後、そのうちの1人が退職を申し出ます。
理由は「キャリアの方向性の違い」。

人事は引き止めを試みました。
「評価には満足していないのか?」
「給与や待遇に不満があるのか?」

しかし返ってきたのは、曖昧な答えでした。
「そういうわけではないです。ただ、自分の成長を考えて…」

この時点では、企業側は本質に気づいていませんでした。
そして半年後、もう1人の外国人エンジニアも同じ理由で退職します。

ここでようやく、E社は外部ヒアリングを実施しました。

そこで明らかになったのは、評価そのものではなく、
**「評価の意味が伝わっていない」**という問題でした。

具体的には、次のような声がありました。

「“問題ない”と言われるが、それが良いのか悪いのか分からない」
「何をすれば次のステップに進めるのかが見えない」
「評価基準が曖昧で、自分の成長が測れない」

つまり、企業側は「評価しているつもり」でも、
本人にとっては「評価されている実感がない」状態だったのです。

日本企業では、「減点方式」や「総合判断」が多く用いられます。
また、「あえて厳しいことは言わない」「空気を読む」といった文化も存在します。

しかしこの評価のあり方は、外国人財にとっては非常に分かりにくいものです。

評価が曖昧であるほど、本人はこう考えます。
「この会社では、自分はどう評価されているのか分からない」
「成長しているのかどうかも分からない」

そして最終的に、
「ここにいてもキャリアが見えない」
という判断に至ります。

重要なのは、これは不満が“表に出ない”ことです。
大きな衝突もない。トラブルもない。
しかし確実に、離職に向かって進んでいる。

これが最も見えにくく、そして危険な状態です。

E社はこの問題を受けて、評価制度を抜本的に見直しました。

まず、評価基準を具体化しました。
「何をすれば評価されるのか」を、数値・行動レベルで明示。

次に、評価フィードバックの方法を変更
「良い/悪い」ではなく、
「何ができていて、次に何を求めるのか」を明確に伝える形にしました。

さらに、キャリアパスを可視化
「このポジションから次に進むための条件」を明文化しました。

その結果、次に採用した外国人エンジニアは、
自分の成長を実感しながら働くようになり、
3年以上にわたって定着・活躍しています。

そして興味深いことに、
この改革は日本人社員にも好影響をもたらしました。
「評価が分かりやすくなった」
「何を目指せばいいか明確になった」
という声が増えたのです。

この事例が示しているのは、
評価とは「実施すること」ではなく、
「伝わること」ではじめて機能するということです。

高度外国人財の活用において、評価制度は“最後の仕組み”ではありません。
むしろ、組織の方向性と成長のルールを示す“中核”です。

もし今、
「評価しているのに伝わっていないかもしれない」
と少しでも感じたのであれば、
それは見直しのタイミングかもしれません。

評価制度を変えることは、
単に制度を整えることではありません。
組織の未来を設計し直すことです。


《今回のポイント》

評価の問題は「制度」ではなく「伝わり方」にある
曖昧な評価は、成長実感の欠如につながる
外国人財は評価の透明性を強く求める傾向がある
フィードバックは「次に何をすべきか」まで示す必要がある
評価制度の改善は、組織全体の成長を加速させる


異文化コミュニケーション研究所(R)は、「国費外国人留学生の紹介」、「グローバル人財の採用・活用に関するコンサルティング」のスペシャリストです。

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