コラム

第46話 いらっしゃいませ!

言葉は使わないでいると忘れてしまうもの。
それこそ、外国語である英語なんて使わないでいたら、すぐにレベルが下がってしまう。

最近、私の周りにも高校のときや、大学のときに留学したことがある、…という人が結構いる。マ~ほとんどの人が短期留学(3ヶ月未満)なのだが、それにしても家族から離れ、一人で言葉や習慣の違う人たちの中で生活したのだから、最近は日本人も勇気のある人たちが増えたと思う。国際化してきたことを、とても喜ばしく思う。

だが、残念ながらその留学経験のある人たちのほとんどは話すことができない。
つまり、コミュニケーションが取れない。

だから、履歴書には「留学経験あり」と堂々と書いていても、それ以外では話せないことが引け目になっているためか、けして自分の口から留学したとを話さなかったりする。

これでは、せっかく留学した経験を持っていても、逆に『引け目』になってしまって「マイナスの価値」しか残らない。まったくもって最悪の事態だ。

今までも何度も書いたが、英語なんて日本にいても勉強できる。
最近はCNNだって、インターネットだって、その気になったら日本にいても100%英語環境を作り出すことは非常に簡単なのだから、自信がなかったら、継続してヒヤリングを鍛え英語に慣れ、外国人と話す機会を積極的に作り「コミュニケーション」できるように努力すればいい。

その内に、できるようになるものだ。自分のペースで焦らないことだ。

また、たとえ留学していたときに自信をもって話していたとしても、留学から帰ってきて何年も全く英語に接していないと、本当に錆付いてしまう。極力英語を聞いたり話したりする機会をつくるように努力しないといけない。要注意だ。

この現象は、たとえ母国語の日本語であっても同じだ。
今回は、私の錆び付いた日本語の恥ずかしい経験を紹介しよう。(f^^;)

あれは留学してから丸一年を過ぎようとしたときの夏。ロスで友人に連れられて安いファミリーレストラン風の「日本食レストラン」へ行ったときの出来事だ。その店の名前は、『Popeye』(ボパイ)。

私が通っていた大学の周りには、日本食レストランなんて全くなく、久しぶりの日本食に、喉をならしながら店に入った。自動ドアが開いた瞬間、目の前に広がる、天丼や、カレーライス、トンカツ等々の大きな写真。日本食に飢えていた私は、思わず「ウォ~!!」と歓声を上げてしまった。

日本食、日本食、日本食!ヨダレが、あふれんばかりの感激!(^^;)

そして、フッと見ると、まるで絵に描いたような光景があった。
日本人らしい女の子が、ピンク色の短めのユニホームに、白いエプロンをつけて、丸いトレーを抱えて立っていたのだ。

「ウォ~!」、今回2度目の感激!(f^^;)

そして、私の方に向かってニコリと微笑み、「いらっしゃいませ!」と言ってくれた。

さあ、私は驚いてしまった。久々に美人で可愛い日本の女の子に声を掛けられたから、何か潜在意識の中で勘違いが起こってしまったようで、心臓はドキドキ、言葉が出なかった。

もちろん、けして「好きです」と言われたわけでなないし、単に挨拶程度の言葉なのだが、久々にその言葉に触れた私は、何をどうしてよいやらパニック状態!(*_*)
<以下、私のつぶやき….>

エ~と、「いらっしゃいませ」って、…
エ~と、Welocomeだよな、…
Welcomeって言われたって、エ~と何て返事していたっけ?…
エ~と、Thank you.なんて答えたっけ?…
いやいや、Welcomeに返事なんてしたかな?…
でも、せっかく挨拶してくれたのに、挨拶しないはずはないよな~、…

などとアタフタしていた私は、結局….

「どういたしまして」

と答えてしまった。(f^^;)
笑ちゃうけど、お辞儀までしてね。

頭の中って、どうやって情報が整理されているのか分からないが、いずれにしても、しばらく使わない脳細胞って、突然その部分に新たな刺激が来ても対処できないみたいだ。

だから、いつでも気の向いたときに、興味を持って英語に接することが大切なのかもしれない。

最後に、このレストラン、さらに一年後に訪れたら、店の名前が変わっていた。その名前は『Eyepop』(アイポップ)。….気が付かれただろうか?そう、ポパイの反対。たぶん、商標の関係か何かで、名前を変えざるを得なかったのだろうと思うが、それにしてもオーナーの機転。私は感服したことを覚えている。(^^)

それじゃ!

[2000年8月24日発行]