コラム

第9話 SMの世界….?!

今回の話は、けして鞭と革のタイトスーツにピンヒール、…なんての話題ではないので、初めにお断りしたい(f^^;)。ちょっと残念に思われる人もあるかもしれないけど、マ~我慢我慢。

これは、アメリカ人のS君と日本人のM君の二人の頭文字からの命名で、特に深い意味はない。それに、けして二人がそんな関係にあったわけでもないので絶対に誤解のないように。(f^^;)ヘヘ

アメリカ人のS君と、日本人のM君は寮のルームメイト。仲の良い二人ではあったが、傍から見ているとほとんど「主従関係」状態に見えていた。S君はちょっと「か弱い」雰囲気だったし、M君は剛健な雰囲気だったからだ。

実際、「喉が乾いたよな~」とM君が一言言うと、S君はM君の意図を察して「何でそんなことを言うんだ?」とイヤそ~な顔をするのだけど、すかさずM君が「どれだけ、ぼくが君のことを友人として普段大切にしているのか、君はよく知っているはずだ。そんなぼくが喉が乾いたと言っているのに、ルームメートの君からクレームを受けるなんて、ぼくはとても悲しいよ…。」から始まり、挙句の果てには「このボケ!速よう、ジュース買って来い!」と時間をかけてじわじわと「いじめ」るんだ。そして、結果的に気の弱いS君は「わかったよ、買ってくるよ。いつものでいいんだろ。…」と言ってロビーの自動販売機にジュースを買いに行くような関係だった。(^^;;;

一度S君に、「君はなんでそんなに彼(M君)の言うことを聞くんだ?」と隠れて質問したことがあるのだけど、S君は「Mは良い奴だから…。」と、まるで『右の頬を殴られたら、左の頬を差し出す』的な世界を感じてしまった。マ~、S君もいじめられることに一種の快感を覚えていたのかもしれない?!さて、そのS君。サドマゾの世界ではなく、実は同性愛主義なのだ。(これ本当!)私も、寮で、何人かのちょっと「不気味」なカッコをしている人とすれ違ったりしたのだけど、彼自身は気弱そうな雰囲気だけで、外見的には普通の男だった。


ちょっと話しは飛ぶけど、その「不気味」な例の一つを紹介しよう。
身長はぼくと同じく大体175cm位。でも重量(体重というニュアンスでは表現できないので…)は、ぼくの2倍くらいありそうなかなり「太め」の黒人の学生がいた。彼は、歩くたびに体じゅうの肉を「ゆさゆさ」させていた。それは単に太っているという理由だけではなくて、彼の「モンローウォーク」が原因だった。

目を閉じて想像してほしい。
君の目の前に、テキストを抱えた肌の黒い学生が、ゆさゆさと体を揺らして授業に向かって歩いている。そして、彼はちょっと顎を斜め上に上げて「気取った顔立ち」でツンとし、人のことを「斜め下」に見るような素振りをしている。しかし、思春期の青年がみな同じように、顔はニキビだらけ、たとえると「豆大福」のようなブツブツの顔だ。そして、彼のお尻は二つ「スイカ」をつけているかのように「豊か」で、1歩1歩足を運ぶ度に、まるでスイカに近寄ってくる小さな虫でも追い払うかのように、しゃくり上げるような「上下運動」を繰り返す。それも、短パンに「黒い網タイツ」を履いて….。(f^^;ゾゾゾ…

でも、彼らは結構気さくなんだよね。すれ違うときにこちらが「ハイ!」と言うと、これがお洒落に「ハ~イ!」と言うんだ。悪い奴ではなさそうだと直感するけど、ちょっとお近づきに成りたくない感じだった。

あと聞いた話だけど、これもなかなか面白いので紹介しちゃおう。
ある夜、女子寮に「男女の戯れる声」が聞こえてきたそうだ。もちろん、学校の規則で夜9時以降に男性が女子寮に入ることは禁止させられているから、見つかったら大変で、場合によっては退学となってしまう。

警備のおじさんが、窓越しからその「雄叫び」を耳にした。すぐさま、ドームマザーと言われる住み込みの「寮監」おばちゃんに通告し、二人でそ~っとその部屋のドアに耳をそばだてて中の様子を確かめたところ、やはり中には「男」の雰囲気を感じさせたそうだ。

すぐさま、ドームマザーはドアを叩き ”Open the door!”と叫んだ。出入り口はそのドア一つだから、逃げようがない。窓も飛び出すには高すぎる。すると、中では明らかに逃げ惑うようなドタバタと音がする。もちろん、返事が返ってくるわけもなく、ドアを開ける様子もない。

ドームマザーはまた、”Open the door!”と叫けんだと同時に、警備のおじさんに合鍵を使ってドアを開けさせた。すると、….。

なんと、その部屋の中では、数人の女性がマッ裸。必死に服を着込んでいたそうだ。…..。その場に居合わせなかったのがすこぶる残念だが、部屋の中で何が起こっていたのかは、大体想像はつくでしょう。(^^?)

よくクラスメートと歩いていると「彼女は、男性も女性も愛せるんだ。」と、教えてもらったりしたものだ。ちょっと、理解に苦しむけど….。

さてさて、話しを戻しましょう。

S君は同性愛者だけど、M君はノーマル。傍から見ていると、夜襲われることはないのか心配だけど、S君の普段の行動からすると、襲われることはあっても、襲うことはなさそうだから、いかがわしい噂も立たなかった。それに、「その道」の人達にはそれなりの「仁義」があるらしく、素人さんには手を出さないんだそうだ。(^^;)そう考えると、ノーマルな連中の方が見境無く暴挙に走ったりして、相手を不幸に陥れる場合が多いことを考えると、世の中不思議なものだ。

M君は名前の割には、サドっ気(Sっ気)があることは説明した通り、S君をある日いじめたそうだ。話しの発端は、彼らの部屋から何か物が無くなったことから始まる。無くなった物自身は大した物ではなかったらしいけど、問題はS君が部屋にいるときにそれが無くなったということ。つまり、S君は犯人を知っていることになる。

M君は、そのS君に、誰が自分のいないときに部屋に遊びに来たのか教えろ!と詰め寄ったそうだ。でも、S君はそれを答えなかった。理由は、部屋にまで遊びに来るということは、当然S君の友人だから、M君に誰が来たかを教えると友情を踏みにじると考えていたらしい。

でも、実はM君。誰が部屋に遊びに来ていたのかは、薄々知っていたそうだ。
S君の交友関係はルームメートの彼が一番よく知っていたから、当たり前といえば当たり前なのだけど、そこはM君、この機会を使ってストレス解消とあまり「サドっ気」もろだしの行動に出たそうだ。

もちろん、黒いマスクや、ハイヒールに皮の鞭、…。なんて行動に出たわけではなく、知的ないじめに入っていった。(^^;)

実はS君、敬虔なるクリスチャンなのだ。
毎週欠かさず教会に行くし、バイブルをとても大切にしている。テレビなんかを見ていると、アメリカの法廷でバイブルに手を乗せて「ウソはつきません」と宣誓させられる光景を目にすることがあるけど、クリスチャンの国のアメリカでは聖書に手を当ててウソをつくということは、「神様に向かってウソをつくこと」に相当するため、一般の善人の人は絶対にウソがつけないのだそうだ。(江戸時代の「踏絵」はそんなところから発想したものなのだろうね。考えてみれば酷いことをしたものだよね。)

いずれにせよ、M君はそれをやったのだそうだ。
S君の大切にしている聖書に手を乗せさせ、すべてを白状するように強要したのだそうだ。さすがにS君は困ったらしく、知らない、知らないというときには、心なしか聖書から手が離れていたそうだ。ウソはつけないものだよね。かわいそうに…。

最後に、S君、やはり女性役だったらしいことを付け加えておきたい。(^^;)

[1999年12月2日発行]