コラム

第87話 マネーの虎

昨夜、日本テレビ土曜日の深夜番組『マネーの虎』なる番組を見ていました。人気のある番組のようで、今度ゴールデンタイムに放映するようです。ご存知の方も多いかと思いますが、番組の内容を簡単に説明すると、ベンチャー企業で成功している雄、数名が、新たにベンチャー企業を起こしたいと考えている人の事業説明を聞き、見込みのある人に対して出資をしてあげるというものです。

目の前に百万円の束が山になっているのを見ると、やはり貧乏人の私なんかにとっては、『圧巻』です。(f^^;)

昨夜の出演者の一人は、24歳。現在はイギリス系のレストランでウエーターをしていると話していました。彼は、イギリスで2年間の留学経験があり、その経験を元にイギリスで日本のハイテクなイメージをうまく表現するカフェバーを開くために、4000万円のお金を出資してくれるように頼んでいました。

結果から言うと、彼は出資してもらえませんでしたが、彼の話を聞いて残念に感じたことがあります。

彼は、留学時代に人種差別を受けたとしきりに話していました。
そして、「イギリスでは….」とイギリスのすべてが分かっているような話し方をしていたのです。

日本に生活していると、一部の「部落問題」を除けば、同一民族的な発想から「差別」は存在しません。少なくとも、顔かたちや、色、言葉では差別のしようがありません。ですから、相手を見て
すぐに「こいつは、○○だ。」的なことは起こりません。

しかし、私たち日本人(東洋人)が、イギリスのようなアングロサクソン系の国に行けば、すぐに『違い』が分かります。さらに、コミュニケーションをとろうにも英語の不自由な留学生など、それこそ相手にとっては「面倒」なものです。

つまり、日本人は母国では一度も味わったことのない、その手の感覚に多分異常なほど「敏感」なのだと思います。それが『しこり』として残ってしまう人がいるようです。これって、とても残念なことです。

しかし、ちょっとした出来事を即「人種差別」に結びつけるのは本来おかしいことです。それって、単なる憶測でしょう。個人的に相手のことが嫌いということだけかもしれませんし、相手の「虫の居所」が悪かっただけかもしれません。以前にも何度か書いたことがありますが、日本人は「差別」と「区別」の違いがが頭の中で明確なっていないくらいですから、勝手な思い込みの場合も多くある。

恋愛感情で説明すると理解しやすいのですが、日本人はほとんどの場合で「人種差別」はされてはいません。

一般的に「差別」している人種の人に恋愛感情を持つことはありません。しかし、アメリカやイギリスに行くと、日本人の女性は彼らにやたらモテるのです。人種差別は性別に関係ありませんから、日本人の男性にだけ彼らが「人種差別」していることはないでしょう。

確かに、すべての人が理性的ではありませんから、全く差別が存在しないとは言えませんが、少なくとも留学で何かをつかんできた人は、その事実を心の『しこり』として持ち続けることはないでしょう。そんなことよりも、もっと多くの楽しい体験の方が表に出てくるからです。

ましてや、折角希望を持って留学をしているのですから、人生の糧になるように留学経験をポジティブに活用してほしいと感じた次第です。

それから、たかが数年間の留学経験くらいで「私の留学していた○○では…..」などと口走ってはいけません。より深い経験をした先輩からすると『鼻で笑』いたくなります。とても薄っぺらだからです。

私も時々留学や学歴を「鼻にかけている」人に合いますが、そんな人格では『和』の中心にはなりません。よく言われるように、仮に人が集まってきても、それはその人の「肩書き」に寄ってきているだけです。

人生って、一人一人の作り出す歴史小説のようだと思うのですが、その一ページに価値のある「留学」を刻んで、そこから新たなページが広がってほしいと思います。

ちょっと脱線しますが、「僕らはみんな生きている」って、面白い日本映画があります。その中で真田弘之の一言がとても印象に残っているのでご紹介します。

ちょっと正確さには欠けますが、こんなことを言っていました。

= 俺の親父は、日立製作所で何十年も一生懸命働いてきた。=
= 毎年来る何百枚もの年賀状をもらうのをとても楽しみに =
= していた。でも、退職したとたん数枚しか送られてこな =
= くなり、愕然としていた。              =

人それぞれ感じるものがあると思いますが、一期一会を大切にできるようになりたいものですよね。

それじゃ!

[2002年3月17日発行]