優秀な高度外国人財が定着しない会社に足りないもの――受け入れ態勢を整えることが成功への第一歩
「せっかく優秀な外国人材を採用したのに、なぜか長く続かない。」
これは、多くの日本企業が抱える共通の悩みです。
ある企業では、海外大学院を修了し、日本語力も高い優秀な高度外国人財を採用しました。
面接では受け答えも的確で、専門知識も十分。採用担当者も現場責任者も、「この人なら、すぐに戦力になる」と大きな期待を寄せていました。
ところが、入社後しばらくして、少しずつ違和感が生まれます。
仕事そのものには真面目に取り組んでいる。能力もある。けれど、周囲との距離が縮まらない。会議では必要最低限しか発言せず、雑談にも入りづらそうにしている。上司も気にはしているものの、「そのうち慣れるだろう」と考え、特別な対応はしていませんでした。
本人もまた、不安を抱えていました。
仕事内容そのものは理解できても、「誰に、どこまで相談していいのか分からない」「困ったときに頼れる人がいない」「周囲は親切だが、何となく自分だけ外側にいる気がする」。そんな気持ちを抱えながら、日々を過ごしていたのです。
この企業に足りなかったのは、本人の能力ではありませんでした。
足りなかったのは、受け入れ態勢です。
日本企業ではよく、「良い人を採用すれば、あとは現場で自然になじむだろう」と考えがちです。
しかし、高度外国人財の活躍は、採用時点では決まりません。入社後に、安心して力を発揮できる環境を整えられるかどうかで、大きく変わります。
この会社が変わるきっかけになったのは、人事担当者の小さな気づきでした。
「この人にもっと頑張ってもらう前に、会社の側が“働きやすい入口”を用意できていただろうか」
そこで、会社は受け入れ態勢を見直しました。
まず行ったのは、相談相手を明確にすることでした。
直属の上司とは別に、業務以外のことも相談しやすい先輩社員を一人つけました。いわゆるメンターのような役割です。これにより、日常の小さな不安や疑問をため込まずに話せるようになりました。
次に、入社直後の説明内容を改善しました。
業務内容だけでなく、「この会社では会議でどのように意見を出すのか」「困ったときは誰に相談するのか」「評価面談では何を見られるのか」といった、職場で働くうえでの暗黙知も言葉にして伝えるようにしたのです。
さらに、現場にも変化がありました。
上司は「困ったら言ってください」と待つのではなく、定期的に声をかけるようになりました。チームもまた、歓迎会を一度開いて終わりではなく、日常的に話しかけることを意識しました。ほんの短い雑談でも、孤立感を減らす効果があったのです。
すると、少しずつ本人の表情が変わっていきました。
会議でも意見を言うようになり、自分の専門性を生かした提案も増えていきました。周囲も、「能力は高いと思っていたけれど、ここまで発揮してくれるとは」と驚いたそうです。
この事例が教えてくれるのは、とても重要なことです。
高度外国人財の活躍は、本人の努力だけに委ねてはいけないということです。
企業側が受け入れ態勢を整えることは、特別扱いではありません。
むしろ、多様な人が安心して働ける環境をつくるという、組織として当然の責任です。
受け入れ態勢とは、豪華な制度をつくることではありません。
「困ったときに相談できる相手がいること」
「職場のルールや期待値が明確であること」
「周囲が意識的に関わること」
この三つがあるだけでも、定着と活躍の可能性は大きく変わります。
採用を成功させる企業は、採用前よりも、採用後を大切にしています。
高度外国人財を迎え入れるとは、単に人を増やすことではなく、新しい力が組織に根づく土壌を整えることです。
もし、「良い人を採ったのに、なぜか活躍しない」と感じているなら、見直すべきは本人ではなく、会社の受け入れ態勢かもしれません。
成功へのヒントは、いつも組織の側にあります。
《今回のポイント》
・高度外国人財の定着と活躍は、本人の能力だけでなく、企業の受け入れ態勢に大きく左右される
・相談相手の明確化、暗黙知の言語化、日常的な声かけが重要
・受け入れ態勢の整備は特別扱いではなく、多様な人材が活躍できる組織づくりそのもの
・採用の成功は、入社後の環境整備で決まる
異文化コミュニケーション研究所(R)は、「国費外国人留学生の紹介」、「グローバル人財の採用・活用に関するコンサルティング」のスペシャリストです。
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