なぜ彼は何も言わずに辞めたのか ― 見えない離職理由という経営リスク
「特に問題はありませんでした」
退職面談で、彼はそう言いました。
名門大学院を修了し、日本語も流暢。
将来の海外事業責任者候補として期待されていた高度外国人財Cさん。
入社2年目。
突然の退職願。
人事は驚き、上司は困惑しました。
「何か不満があったのか?」
「評価が低かったわけでもない」
「給与も同年代より高い」
しかし、退職面談ではこう答えました。
「特にありません。本当にお世話になりました。」
本音は語られなかった
3か月後。
Cさんは競合の外資系企業に転職。
そこで初めて、共通の知人を通じて本音が伝わってきました。
・自分のキャリアパスが見えなかった
・なぜその評価なのか説明がなかった
・重要な会議に呼ばれなくなった
・将来像を相談できる上司がいなかった
しかし在籍中、彼は一度も強く主張しませんでした。
なぜなら、
「波風を立てずに去る方が良い」
と考えたからです。
日本企業が気づきにくい“静かな離職”
高度外国人財の離職理由が「不明瞭」になる背景には、
・本音を言わずに退職する文化差
・上司との距離感
・フィードバックの不足
・キャリア面談の形式化
があります。
特に優秀な人材ほど、
不満を言う前に“次の場所”を見つけています。
本当に怖いのは「辞めること」ではない
怖いのは、
「なぜ辞めたのか分からないこと」
です。
理由が分からなければ、改善もできません。
結果として、同じことが繰り返されます。
実際、この企業ではその後3年間で
高度外国人財が4名連続で退職しました。
しかし退職理由は、すべて
「一身上の都合」
でした。
経営が持つべき視点
高度外国人財の定着は、
“制度”だけでは実現しません。
必要なのは、
✔ 定期的なキャリア対話
✔ 評価理由の言語化
✔ 将来ポジションの可視化
✔ 経営層との接点
です。
離職は結果であり、
原因は日常のコミュニケーションの中にあります。
《今回のポイント》
✔ 「理由不明の退職」は最大の経営リスク
✔ 本音を引き出す仕組みが必要
✔ キャリア対話の設計が定着率を左右する
異文化コミュニケーション研究所(R)は、「国費外国人留学生の紹介」、「グローバル人財の採用・活用に関するコンサルティング」のスペシャリストです。