コラム

第22話 旅行 – 野宿は日本の習慣?!?

お金のない旅行っていうのは、お金のある人の旅行に比べると、金額に反比例して多くの経験をすることができる。もちろん、お金がなければできないこともたくさんあるけど、お金を使うということは、誰かにお金を払うことだから、イコール誰かがお膳立てしてくれることを意味する。つまり、自分では出来ないということだ。

この世に産まれてきたからにゃ、いろんなことを体験しよう。

貧乏旅行の目的地は、アメリカの最南端「キーウエスト」だった。途中、一人の日本人留学生と合流して、フロリダへと一路バスで進んでいったが、バスの進む距離に比例して、北部の凍るような寒さから、南国の温かさ(暑さ)へと変わっていく様子を見るにつけ、「アメリカはデケ~な~」とつくづく感じさせられた。

ご存知のように、フロリダは、「バケーションランド」!
いくらお金がないからといっても、そこは童心に返って「ディズニーワールドには絶対に行くぞ!」と決めていた。入場料はなんとかなったとしても、リゾート地のホテル代まで出すほどお金がなかったし、夜行バスの中で寝るのもさすがに疲れが出ていたので、暖かければ野宿をしようと思っていた。

当時、ディズニーワールドの入り口には、広々とした草むらで荒涼としていた。私たちにとっては、その場所は最適な「寝床」に見えた。その場所に到着したのは、既に夕方4時過ぎ、陽が落ちるまではまだ時間があったので、私たち二人は荷物を抱えて草むらに入り、適当なところに荷物を置いた。

明日の朝まで過ごすのに少なくとも水がいるだろうと思い、手提げのビニール袋を持ってディズニーワールドの入り口に行き、袋いっぱいに水を入れた。少し袋に穴が開いていたのだろう、草むらへ帰る途中その水を「ボトボト」とこぼしながら進んだ。

周りの人達からすれば、こ汚い東洋人が大きなビニール袋に水を抱えて、それも半分くらいこぼしながら草むら方向に歩いていく様子はよっぽど滑稽に思えたのだろう。草むら入り口まであと10mほどになったころで、パトカーが来てしまった。

間一髪!
お巡りさんたちは、いつものように、いつものごとく銃に手を当てなが
ら、私たち二人に近づいてきた。

ここからは、職務質問。
警察  :その水はなんだ? (ニヤニヤしている)
私たち :飲み水。     (ニコニコして返す)
警察  :これからどこに行くんだ?
(ゆっくりした英語で話してくる)
私たち :あの草むらの中。 (何事か?といった顔で返す)
警察  :草むらで泊まってはいけない。
(ちょっと、マジな目で見つめる)
私たち :エッ?知らなかった。
(そんな常識があるのか?とばかりの顔)
『日本では、こういった遊園地に行くときには、草むら
で野宿する習慣があるんだ!』
(まるっきりの大ウソをつく(f^^;))
警察  :(ニヤニヤ)….。
私たち :駄目なのか?(往生際が悪い…)
警察  :どこに行くんだ、そこまで連れていってやる
(まだニヤニヤしている)
私たち :(あきらめて)草むらに荷物があるから、バス停まで…。
警察  :(また、ニヤニヤ)

仕方なく、荷物を草むらから持ってきて、パトカーに乗せてもらい、バス停にまで送ってもらったのだが、終始ニヤニヤ顔の警察官は、この手の「ノジュラ~」(野宿をしようとする人…私の造語)をよく知っているらしく、10分ほどの間、私たちのへたくそな英会話に付き合ってくれた。

そんなに怒っている様子でもなかったので、バス停に到着したとき、私はすかさず「一緒に写真をとってももいいか?」と一(いち)観光客として、警察のお兄さんに写真を申し込んだら、何とOK!。(f^^;)

パトカーを後ろにして、2ショット写真を撮ってしまった。

….しかし、寝るところを失った私たちは、再び夜行バスのブーメラン旅行に旅立ったのでありました。

付録
< 『さあ、行こう留学だ!』専用特殊辞書! >

ブーメラン旅行:
ブーメラン旅行とは、A駅からB駅に出発するバスに乗込み、再びB駅からA駅に戻ってくることをいう。行って帰ってくるが、目的地は出発点のA駅。A駅の地域で一日過ごしたいが、すでに夕方もしくは夜間になってしまい、A駅近くで宿を探すお金がないときにする行為。

バス停で寝ると警備員に捕まるが、夜行バスの中なら捕まらない。そのため、移動するバスを寝床にする。しかし、目的地は出発点であることから、夜中に到着するB駅を選び、折り返して帰るバスに乗り換える必要がる。

バスの中であまりよく眠れない上、夜中に乗り降りをしなければならない、どうしようもない旅行。但し、基本的に寝ている間の安全は確保される。終わり

(f^^;)ア~、肩凝った!(^^;)

[2000年3月2日発行]