コラム

第85話 食事

留学し寮生活が始まると、食べ放題のBuffetスタイルの食事が待っている。

私の経験によると日本では『寮の食事』というと、プラスチックのどんぶりとお茶碗の中間くらいの器に、各人が直径1mはあるような大きなジャーに入ったご飯をよそり、既にお皿に盛り付けられた『冷えたおかず』を食べるといったイメージがどうも強い。

初めから選択の余地がない「定食」の考え方が日本では定着しているからだろう。

たぶん読者の中には『そんなこと言ったってアメリカだって同じように「○○セット」ってあるじゃないか。そんなの偏見だ!』と思われる人もいるだろう。

なるほど、たしかにハンバーカーショップに行くと「○○セット」は存在する。しかし、それはいくつものリストの中から『選択』する意思決定を食べる人に委ねていて、その選択の一部にセットが存在している点が大きく違うと思う。

極端な言い方をすると日本の寮生活での唯一の『選択』は、食べるか食べないかの選択しかないように思われる。つまり、「いやなら食うな!」と言われているようなものだ。

定食:定まった食=>供給者側論理

ここまで言ったら言い過ぎか…..。(f^^;)

マ~それはさておき、どれだけ食べてもいいと言われると貧乏育ちの私なんかは「あ、そうですか」てなもんで、遠慮なく食べてしまう。もちろん、まだ20代前半『食欲』は旺盛だ。(^^;)

しかし、それが後々トラブルの元。
スポーツが好きで、毎日何かしらの運動をしている人は問題ないのだろうが、一日の運動量がせいぜい「大学の校舎と寮の歩行」程度だと消費が少ないのだから、日々食べた分だけ太っていくのだ。

さらに、目を覆うような『高カロリー』食品ばかり。
低カロリーを狙ってサラダを食べようにも、こってりとしたドレッシングをかけていては話にならない。

また、不思議なものでトレーを持って並んでいると、既にメインディッシュを取っていても、前の人がもっと美味しそうな料理を取ると、何故か『…それじゃ、ボクもそれを….』と言いたくなるのが人情(?)
ってもの。

特に、ご飯を主食として育ってきた私たちが、空腹を満たすために「お米」の代わりに「おかず」でお腹を膨らませると、3ヶ月もすると『変身!』

するのである…..。(^^;)

それに太るだけならまだしも、そういう食生活は眠気をさそう。
なんせ、もともと血流の悪い頭(私だけ?)、食事の後はさらに血液がお腹の周りに集まるのだから、眠い眠い!

始めの頃は「時差ぼけ」でも済むのだが、何ヶ月も続いては、理由にはならない。

お恥ずかしい話だが、あるクラスで完璧に寝入ってしまい、終了の鐘にも気付かなかったことがある。クラスメイトも冷たいもので、ほとんどの連中が私を見捨てて部屋を出て行っていた(f^^;)。

マ~いずれにせよ、先生の話す英語もわからないほど腹はいっぱいでクラスに出ることだけはしないように、要注意だ。

それから、アメリカでも醤油は簡単に手に入るからわざわざ日本から持っていく必要はないが、レストランで食事をする際に醤油を携帯することをお勧めしたい。

何か味に物足らなさを感じたときに、ほんの数的の醤油が問題を解決してくれる。不思議なもので、アメリカ人にその味見をさせると、全員が「この方がおいしい」と言うのに、あまり一般の家庭にまでお醤油が浸透していない。私からすると、結局アメリカ人は『味音痴』なのだと思っている。

最近は、日本人が何かというと醤油がほしいというものだから、ステーキレストランでも醤油を持っている店があるが、マ~一応携帯することをお勧めする。

その醤油が代表するように、アメリカの料理で「うまいもの」ってほとんどない。私の記憶によると、日本食や中華を除いては、うまいと感じた料理は「なまずのフライ」と、「生かき」くらいなものだ。

マ~単に、貧乏学生には『旨い店』に縁がなかっただけかもしれないが….。

それじゃ!

[2002年2月17日発行]